今回は曲を取り上げておはなししようと思います。
【劇音楽『アルルの女』】/ ジョルジュ・ビゼー 作曲
今年(2022年)の1月8日に東京芸術劇場でこの曲を演奏しました。
一般的によく演奏されるのは「第一組曲」「第二組曲」の二つで、今回演奏したのはいわゆる
「全曲版」ということになります。
本来は劇の付随音楽ですが、今回は4名の俳優の方による「日本語朗読版」での上演となりました。
今回はその演奏会を通しての感想を話そうと思います。
内容のはなし
『アルルの女』が劇音楽であるということはもちろん知っていましたが、今回、全曲を朗読とともに演奏して、今まで感じたことのなかった物語の深さをすごく感じました。
なじみやすいメロディーが多い『アルルの女』ですが、物語の内容は人間の心をとてもリアルに描いた悲劇です。
あらすじ [ 岸 純信(オペラ研究家)※公演プログラムより抜粋 ]
プロヴァンスの小村。
農家の若主人フレデリは、身持ちのよくないアルルの女に夢中。母のローズや祖父フランセ、老羊飼いバルタザールはそれを危ぶみ、フレデリを愛する少女ヴィヴェットを応援する。
しかし、アルルの女に執着する馬の番人ミチフィオが現れ、「彼女はここ2年ほど自分の情夫だ」と告げ、手紙を見せる。その成り行きにフレデリは嘆く。
一方、バルタザールは、フレデリの弟で白痴(Innocent)と呼ばれる少年が、母親から構って貰えないことを気の毒がる。
ヴィヴェットがフレデリに声を掛けるが彼は拒絶。しかし、のちに態度を変えて、ヴィヴェットに「好きだ」と告げる。ところが、馬の番人が再びバルタザールのもとを訪れ、それを目撃したフレデリは激しく嫉妬。すると、弟がいきなり精神的な成長を見せ、兄の模様を達者に伝えるので、母のローズは喜びながらも不安を覚える。
そして夜中の3時。絶望したフレデリは、バルコニーから身投げする。
〜〜〜
こういった展開で物語は進んでいきます。
歪んだ愛や憎しみ、嫉妬、といった感情をとてもリアルに描いており、最初のリハーサルの時は僕も朗読に聞き入ってしまいました。
音楽のはなし
組曲の中にもある「前奏曲」「間奏曲」「カリヨン」「ファランドール」などはもちろんですが、この劇には「メロドラム」、という曲を挟みながら進んでいきます。(フルートのソロで有名な「メヌエット」は組曲版が作られる際に他の作品から引用した曲なので全曲版の中には入っていない)
朗読や小編成でのメロドラムによって劇の情景が細かく描写されており組曲版よりとてもシリアスな雰囲気が曲全体を支配しています。
ぜひ一度全曲版を聞いてみてほしいなと思います✨
サクソフォンのはなし🎷
サクソフォンが編成に入っているオーケストラ作品はとても少ないので、「アルルの女」もとても貴重な作品です。
組曲版では「前奏曲」「間奏曲」でのソロが有名ですが、全曲版ではオーケストラに溶け込むような場面も数多くあります。
ソロはもちろんですが、クラリネットとのユニゾン、ホルンとのオクターブユニゾンなどいろいろな色彩を出すためにサクソフォンが使われています。
ぜひそういったところも聞いていただければと思います。
CDが出ました!
ここまで「全曲版を聞いてくれ!」とお話ししてきましたが、全曲版は録音(CD)が極端に少ないのです、、、
が、!!
この度、その今年一月に演奏された録音がCDで発売されました!
本当に素晴らしい奏者の皆様と演奏できて幸せでございました。
NHK交響楽団をはじめとする在京オーケストラの奏者の方々を中心とした「ザ・オペラ・バンド」の演奏です。
なんとブックレットには日本語の朗読が書き起こされていますので、物語を分かりやすく楽しめます✨
ぜひ聞いてみてくださいね✨(朗読の音声は入っておりませんのでご了承ください)
リンクは以下に貼っておきます。
次回もお楽しみに〜
それではまた。
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